昔からヴィンテージのジュータンやアンティークの家具に奥深い魅力を
感じています。実家に は100年ほど昔の李朝家具のパンダジを置いて
楽しんでいます。食器や漆器も時を経た味わいを醸 し出す古いものが、
なんだか好きです・・・。インテリアにも通じる所があると思うので今
回はプライベートな趣味の「金継ぎ」に ついてお話しします。
HARU
オフィスのまん前が靖国神社。毎週日曜日に参道で骨董市があるので時々覗いています。正直、玉 石混交・・・(笑) でもまだ見分ける目が肥えてないの。街中の高級そうな骨董のお店に入るのは敷居が 高いけど、こういう青空市やアンティークフェアだと気楽に見れます。YOKOが住むイギリスといえばアンティークというイメージだけど、やっぱり生活に根付いているの?
YOKO
そうですね。古いものを大切にしつつ、一緒に暮らすというのはあると思います。
特に伝統的には結婚の時に食器を揃えるというのが多いらしいのですが、その一式は何十年経っても日常の中で使われ続けています。たまに少し欠けていたりしますが、それもご愛嬌ですよね。
HARU
思い出が重なり愛着が増すものね。私も、たまーに気分転換に金継ぎ教室に通っているの。
YOKO
わー、私も実は金継ぎに興味があるんです! 割れた食器とか直す のですよね?
HARU
そうそうこういうの!漆を接着剤にして金粉や銀粉で仕上げるの。器のリフォームね。
まだまだ初心者。でも簡単なお皿の欠けや、ほつれで何回か練習したの でいよいよお気に入りに挑戦しました。目白のアンティークフェアでおととしの秋に「あ、素 敵!」って器を手に取ろうとしたら「でも、これ・・・」ってお店の人が裏返した ら・・・ガーンッ!七宝のパーツがたくさん剥がれて地の銅がむき出しに・・・(写真下一枚目)。その時は直せる とは思ってなかったけど、なんだか離れがたくて、少し値切って(でも私にはちょっと贅沢)買 いました。
YOKO
まさしく古い物とは一期一会で、その機会を逃したら2度と会えないかもしれないですものね。
HARU
そう!でもこの器、一体なんだと思う?金継ぎ教室の皆さんにも定かなことはわからなくって日 本のものじゃないんじゃないかとか、底が綺麗だからその面を上にして何か盛る台じゃないかとか? わかる方、ぜひ教えてください!
YOKO
いろんな使い方ができそうですね…。ちなみにどんな風に修復するんですか?
HARU
では、簡単に手順をご説明します!初心者なのでつたないご説明ですし材料などの細かい説明は
省略します。私のお気に入りがどんな風に変わっていくかを楽しんでください。普通は陶磁器を
継ぐんですが今回は七宝の剥がれなので少しイメージが違うかもしれませんが・・・。
1 BIFORE 上の写真。いくつものパーツが剥げ落ちて下地の銅が見えてる状態。残念ながら落ちたパーツはも うないんです。少しゆがんでいるから、きっと落としたりした衝撃でボロッとはげたんだと思いま す。
2 まずはこれ以上パーツが落ちないように全体に透明な新漆を薄め液で薄めたものを塗りました。 下の2つの粘土状のエポキシパテを手でこね合わせて欠けた部分に埋めていきます。まだまだ初心者なので本当の漆ではなく扱いやすいパテで埋めます。乾くのに24 時間かかりますのでまた次回!
3 こんな感じ(下)・・・すぐできたように見えますが、盛り気味にしたパテを乾いた後ひた すら平らになるように水で濡らしたサンドペーパーをかけました。ジミーな作業。でも無心で指の腹で厚さの均一感を捉えながら。縁の銅まで磨かれているのがわかるでしょ?上の二枚の黒ずんだ写真と比べると細い真鍮のせんもくっきりしたのがわかりますよね?
4 綺麗になった所と差が出たので、全体に磨いて真鍮の線がはっきり出るようにしたくなりました。 サンドペーパーを全体にかけ、カボスで撫でたらピッカピカ!(余談ですが銅のお鍋などはカボ スなどで磨くそうです。こ~んなにくすみが取れるならお肌にも?と思いつき・・・湯豆腐で使った残りのカボスでカボス風呂に!そしたら、ピッリピリ、チックチク・・・ とたんにお肌が痛くなって!お肌には逆効果(笑)やっぱり昔の知恵通 り、お風呂は柚子湯に限りますね!)
YOKO
私もかぼす風呂を試そうかと思って読みましたが、おばあちゃんの知恵袋に従おうと思います。笑
5 こうやってまじまじ見ると気が遠くなるような作業で出来ているのがよくわかります。そのパ テに黒い新漆を載せました。そしてよく乾かすのでまた次回!
6 ただ黒いとつまらないので・・・その 上に柄をつける事にしました。全く元の柄を再現しようか悩みましたがそれもつまらないなと。 大好きな唐長さん(京都の襖紙屋さん)の版木の伝統文様の本から迷いつつ「遠州輪違」を選びました。この本は何かにつけて引っ張り出して眺めていてボロボロです。縮小コピーして器の円の柄の大きさと合わせてみました。
トレー シングペーパーに鉛筆でなぞります。肩こる〜・・・
鉛筆で描いた上を漆を筆につけなぞります。ほそーく、ほそーく!またまた肩こる~。
漆絵の面を紙にのせて裏面から筆で優しく撫でます。何度も繰り返して余分な漆を紙に剥ぎ取ってう すーくします。このトレーシングペーパーを黒い漆面にシールのように当てて漆を写し載せます。(ここは両手がふさがり撮影不可)
7 そこに金粉をパフでポンポンまきました。そのままムロ(漆が固まるには適切な湿度と温度が必要。調整したダンボール箱で代用)に入れて3日放置。
8 取り出して余計な金粉を払います。(漆にのっている柄の金粉は剥げません)
う~ん、なかなかいい感じ?次回はその柄の中に色をのせていこうと 考えてます。さてさてどんなになると思います?
YOKO
とても素敵ですね!まるでこうして修復されるために欠けたかのような…。
HARU
いえいえ私のはまだまだ真似事です。でも愛着も増し果物など入れて実際に使えるのが嬉しいです。
それにしても修復の痕跡そのものにアート(美)を見出し、愛でる日本文化の奥深さ・・・すごいなーと思います。
あるいは儚く壊れてしまったものであるからこそ愛おしくなるのが日本人なのかなぁ。
YOKO
確かに日本人は儚いものが好きというイメージがありますね。
HARU
私も日常の中で使い込んだ味わいのあるものを長く大切に使う心は見習おうと思います。物を育てていくような気落ちというか・・・。洋服をお直しして長く着こなしている友人や、椅子を張り替えて使ってくださるお客様を素敵だと思う今日この頃です。
9 いつもお教室の合間にはティータイム。美味しい和菓子が差し入れられます。手をやすめ他の方々の作品を見せていただ くのも楽しいひととき。
YOKO
直した器で一緒にお茶を頂くのもいいですね。実際にしてみたくなりました!
HARU
金継ぎ教室淘という名前です。いつもは私のオフィスから1分の青珠さんという陶器屋さんの二階で習っています。今度、生徒さんたちの展覧会があるんですよ。ご興味ある読者の方はまずは実際にご覧になるところからいかがですか?ぜひいらしてください。先ほどの作品も完成させて端っこに並べさせていただきます。キャリアのある先輩方の素晴らしい作品がたくさん展示されます。展覧会の会場から私のオフィスも近いので、ぜひお立ち寄りくださいませ。
HARU
さて、いよいよ今年もあと少しになりました。来年は1月にメゾンエオブジェに行くことが決定しました。パリでYOKOと合流できそうね!
YOKO
とても楽しみです。
HARUKO
またご報告しますので是非みなさまお楽しみに!