Paris Deco Off 2018
好評いただいた前回のメゾンエオブジェのブログに続き、今回はデコオフについて!
1月18日から22日までパリで開催されたデコオフは、メゾンエオブジェとほぼ並行して開催されるインテリアの催しです。まだ行ってない方に向けて概要をお伝えしますね!
こちらはテキスタイルデザインに特化しています。パリ市内の100以上ものショールームやポップアップショップで新商品や自社のフィロソフィーを各ブランドがプレゼンしています。その中から私たちはお目当のショールームを訪ね歩くのです。日本からのHARUとロンドンからのYOKOが同じものを見ながらも違う角度で捉えているところもお楽しみ下さい。
写真上:デコオフのメインストリートの目印はこのランタン。参加ブランドそれぞれの今年の一押し生地で製作されているそうです。
HARU もうパリっていうだけで何か心を揺さぶられるよね・・・。パリは3回目になりますがデコオフは初めて。とても楽しみでした。
YOKO 建物内のメゾンエオブジェと違って、街に出るとワクワクしますよね。
HARU ミラノサローネに行かれた方にはミラノ市内のフォーリサローネに近い感じといえばわかりやすいですね。家具ではなくテキスタイル編。フォーリサローネより2地域に密集しているから何件も回れるのが嬉しかったです。
写真上:パリ市内。デコオフメインエリアは赤で囲った2ヶ所。
YOKO セーヌ川の左岸側と右岸側の2地域ですね。
下のマップが左岸側。サンジェルマンデプレ駅付近。赤い丸印がショールームです。たくさん集まっていますね。
写真上:セーヌ左岸側。緑のMがメトロの駅。青いN がシャトルバス発着地。
HARU そう!そして下が右岸側。私はオペラ座からルーブル美術館方面へ3分くらいの場所のホテルに宿泊したのでこのエリアには歩いていけましたよ。
右岸の拠点と左岸の拠点間には無料のシャトルバス(というか乗り合いタクシー)があるので便利でした。体力が温存されていればポンデザール橋を歩いて渡るのも素敵です。(愛の南京錠はもう掛けられませんが・・・。)
写真上:左岸右岸の拠点の目印はこのたくさんの旗。ここから無料シャトルバスに乗れますが、混んでいる時は並んで待ちます。
HARU 年々こちらのデコオフに参加するブランドが増えているんですって。人気が高まって来たという事でしょうか?
YOKO パリの街を感じながら、歩けるのがいいですものね。何しろ数がたくさんあるので効率よく回らないと時間がなくなってしまいますね。
写真上:メインストリートから赤いジュータンに導かれるように細い路地を入った中にあるショールームも。雨で風情が高まります。(KOBEは神戸ではなくオランダのブランド)
HARU そうそう。家具のショールームみたいに大きな面積は要さないから小さい間口のお店が軒を並べてくれているけど全部は見れないので事前に日本で情報収集していくことが大切ですね。マナトレーディングとかトミタなど海外ブランドを扱っているところからの情報や、行ったことがある人からの口コミ。マナさんは、いくつかのブランドで日本の顧客向けにプレゼンをするスケジュールを組んでくれていました。そこで日本語訳を聞けるのは本当にありがたいです。
写真上:SAHCOのショールームでマナのスタッフの方が訳してくれました。
写真上:SAHCOの展示空間はパリの気分を盛り上げてくれる素敵な建物。
HARU そして今回は毎年デコオフの取材を長年重ねているかたと1日ご一緒させていただけたことも本当にラッキーでしたね。YOKOも以前からお知り合いの方だったからなお良かったね。
とても丁寧に取材インタヴューする傍で訳していただいたりして・・・。
YOKO そうですね!とても有難い経験で、深いお話も伺えてとても勉強になりました!
写真上:ELITISにて。私たちは彼を8人ほどで囲んでシリーズごとのストーリーなど熱弁を聞くことができました。(彼は同じ内容を期間中何十回も話すのですよね。大変です。)
写真上:ジムトンプソンは開放的な中庭でのインスタレーションと説明会。太陽光でみるタイシルクは輝いていました。
HARU うんうん。
普段、日本では例えばマナトレーディングのショールームに行けば色々な海外ブランドが1度に見れるのでありがたいけど、そのブランドごとの特徴などを深堀はしていないもの。なんとなく「オズボーン&リトルの生地はいつも素敵だなー」とか、「エリティスの生地はこんな感じが多いのね」って感覚的に捉えるくらい・・・。YOKOは?
YOKO
私は普段はロンドンのデザインセンターというプロ向けのショールームが集まるところに行っています。このエリアはヨーロッパの主要なブランドがほぼ集まっているんじゃないかと思うほど。常にそういった環境でブランドの世界観や新作に触れられるのは恵まれていると感じます。
(写真:http://dcch.co.uk 写真の建物内にショールームが集まっています。)
HARU なるほどぉ。そちらではユーロという一つの大きな商圏として捉えているんですね?島国の私たちとはちょっと違うのでしょうね。
YOKO ユーロという商圏はこれから変わる部分も出るかもしれないですが、ヨーロッパ中のものが気軽に使えますね。
逆に今回は日本のプロの方々とご一緒させて頂けたからこそ見えたことも多いですね。何気ないコメントから日本とヨーロッパの比較も感じられ貴重な経験でした。
HARU へー、それはどんな点?
YOKO 例えば、今年のデコオフで強く感じた一つに「ジャポニズム」がありますが、そこで表現される“日本”に対する反応も、日本人とヨーロッパ人では違いますよね。
HARU やっぱりぃ?
私も「JAPAN!」ニホンがキテル!ってことを強く感じました。本当に色々なブランドで「KIMONO」とか「OBI」とか「GEISYA」っていう響きを耳にしたよね。
でも私の印象としては今の東京ではない少し昔の日本っていうか・・・「い・か・に・もっていう日本」て感じ。海外のデザイナーはこう捉えてるんだなーって思いました。
写真上:JABにて。新作の壁紙は他に鶴や虎なども大胆なデザインで強いインパクトを放っていた。
YOKO わかります。私も以前はそんな風に思っていましたが、今回はその外国人デザイナーの感覚に、妙に共感してしまいました。笑
HARU 笑 そっかぁ。YOKOの感性はもう半分外人なのね。
YOKO 海外暮らしの経験から、日本が中と外の両方から見えているのかもしれませんね。
国際結婚でイギリスに住む身としては、日本好きの外国人と接する機会は多いのですが “日本らしい日本” が好きな方が多いですね。日本はFar East (極東) と言われ、“エキゾチック”だそうです。
HARU うん、YOKOも西洋の人にとって、エキゾチックな美女だと思うよ!
YOKO ??そうです? 100%日本人ですよ。笑
ヨーロッパからすると“ひと昔前”の日本の方が、今より日本らしくユニークなのかもしれませんね。
HARU 確かに・・・グローバル化が進むことで国の個性も薄まって行くのかもね。特に都市では。
私自身も着物や帯が大好きで本当に素晴らしことはよくわかっているつもり。でも「日常には関係ないもの」という固定概念になってしまっていたかも。晴れの日の衣装ではなく「ファブリック」として見たら類い稀な素晴らしいものということを改めて気づかせてくれました。
写真上:OBIという名の生地。これらの「ジャポニズム」をどう取り入れて行きましょうか?
YOKO ロンドンの街中でも、着物生地からインスピレーションを受けたような色柄の服を最近よく見かけます。自分が日本人だから特に目に入るのかもしれませんが個人的には大好きです。
余談ですが、去年は大英博物館で葛飾北斎展がチケット完売の大盛況でした。
芸術でいう19世紀後半の「ジャポニズム」も確かフランスが中心でしたよね?
HARU そうだったよね。これも余談ですが往きの飛行機の中でパリ気分を盛り上げようと「ゴーギャン タヒチ楽園への旅」という映画を見ました。フランスからタヒチに移り住んだ彼のアトリエに北斎の浮世絵らしきものが飾ってありました。ゴッホ、モネらとともに浮世絵から強い影響を受けていたのですよね。
写真上:Courtesan フィンセント・ファン・ゴッホ
YOKO 彼らの作品に描かれる日本は、とても興味深いですね。
HARU 時代は巡ってもアーティストの創作意欲を掻き立てるものが異国情緒には存在し続けているんだね・・・。
デコオフのそれぞれのブランドマネージャーが語った中でも、デザイナーが世界を旅して、インスパイアされたものがデザインソースだというお話が共通点としてありましたね。旅先は日本だけでなくアフリカ、モロッコ、カリブ・・・世界中。
YOKO 旅からのインスピレーションは、ヨーロッパでは多いですね。旅先で非日常に触れて、好奇心も刺激されて、多くのインスピレーションが湧いてくるのかもしれないですね。
イギリスやフランスは歴史的にも新しい世界を求めて海を渡り、デザインや文化など様々なものを持ってきたというのもありますしね。
写真上:PIERRE FRAYでは大胆なアフリカンのレイヤーにベルベットをコーディネート。
写真上:CASAMANCEにて。熱帯の植物や鳥のモチーフも多くのブランドで見受けられました。
YOKO さて。他にデコオフで印象的だった事はなんですか?
HARU それは、まだまだベルベット人気は止まらない!という事かな。ベルベットというと一般の方はこっくりとした重厚感、高級家具に使う・・・といった印象を持っているかもしれませんね。でも、全く新しいイメージでインダストリアル系のデザインのチェアに貼ったり、ベルベットの上にモダンなプリントが施されたものをカジュアルに使ったりと使い方の幅が広がっていました。生地そのものも毛足の短いものから長いもの、カットワークの施されたもの、本当に多彩なベルベットを見ることができましたね。
写真上:Christian Lacroixの複雑な加工やプリント技術が施されたベルベット。ファッションとインテリアは既にボーダレス。
YOKO
イギリスでもベルベットはとても人気です。種類も豊富で、それにより表情がとても変わりますね。前回のメゾン編の写真にもベルベットの貼り地は多かったですよね。色味も手触りも柔らかくて癒されるようなものを人々が求めているように思います。
HARU そして誰もが気軽にベルベットをインテリアに取り込む術を得たタイミングが「今」なのだと思います。
写真上:ALDECOにて。優しい色のベルベット。
HARU こうやって振り返っても本当にたくさん、そして丹念に回ったよね。
YOKO 歩くときにこの冊子は便利でしたね。いろいろなところでもらえます。最初に掲載した右岸と左岸の地図も載っていて助かりました。厚さ1センチはあって重いけど・・・。地図のところだけ事前にネットからダウンロードして下調べしていくのもおすすめです。
http://www.paris-deco-off.com/en/
写真上:デコオフ出展の全てのブランドがフルカラーで掲載されている。カタログは下記よりダウンロードできる。http://www.paris-deco-off.com/en/catalogue/
HARU そうそう、この冊子は帰ってきてからも重宝してます。今も眺めてはまだまだ知らないブランドがこんなにも多く存在してるのかとため息ついてます。
世の中には一生かけても見切れないほどの美しい生地や壁紙がこんなに多彩にあるのに私たちの選択の幅の狭さといったら・・・特に遮光とかウォッシャブルとか機能優先で選択しがちな日本で
は・・・。と、そんなことも感じました。もったいないなと思いました。
写真上:ROMOにて。どのブランドもリネンの生地が豊富。ささいな伸び縮みを気にして敬遠してたら味わえない。天然素材が息している証拠と、もっとおおらかに楽しんでほしい。
YOKO 私もヨーロッパに来て、商材の多さには本当に驚きました。住宅デザインでも多様性があり、使われる生地の種類も多く、ディテールも細かい。1つのスキームにたくさんの生地があって、サンプルボードだけを見てもまるでひとつのアートのようで空間の雰囲気が伝わってきてワクワクしたのを覚えています。
写真上:Zimmer & Rohdeのショールームにて。ソファ本体と背面の生地、クッション本体とエッジの生地、そして壁紙で5種が組み合わされている。
HARU 私たちは1枚1枚の生地の良さをデコオフで学んだままお客様にお伝えするんじゃ意味がないものね。それぞれの感性で「新鮮な組み合わせのワクワク感を提案する」のが役目だものね。インプットした膨大な情報をどう変換してオリジナルなアウトプットができるかがポイントだと思います。
写真上:夕暮れの青にブルーの生地が溶け込むような時間。市内のイベントだから味わえるひととき。
HARU そしてパリらしいおもてなしだなーと感じたのは、どこのブランドでも生花が綺麗に生けてあったこと。嬉しかったな。
写真上:LIZZOにて。テキスタイルの世界観をより深めるフラワーアレンジメント
YOKO スパークリングワインや小さいスイーツの提供も棒になった足や、情報が入り乱れてきた脳をどれほど癒してくれたことか・・・。
写真上:デトックス効果のあるこんなお水が流行っているとか。見た目にも綺麗でそのブランドのセンスの良さがうかがわれる。
HARU インテリアに携わる人は一度は体験しても良いイベントだよね。
YOKO モノだけでしたらショールームでも見られるとは思いますが、ブランドのフィロソフィーも含め、やはり本場で見てこそ、感じられることがたくさんあり、それは何とも得難い経験だと思います。
写真上:パリの美しいパッサージュの中にもポップアップショップが。デザイナーズギルドのセミナーはその中で開催。1月はまだ日が短く5時過ぎには暗くなるが、その分イルミネーションが楽しめる。
HARU 街の空気そのものから感じるものもいっぱいあるしね。
この次はやっぱりイギリスに行きたいな。イギリスのアンティークフェアとか、個性的なホテルとか・・・イギリスのインテリアを深堀する旅がしたい!
YOKO インテリアはもちろんのこと、カントリーサイドのマナーハウスや歴史的建築物など、面白いところはたくさんあるので、ご案内しますよ!
HARU 嬉しい〜!!ありがとう。きっとみんなも行きたいって思うよね!その話は今度またしましょ〜ね!
HARU/YOKO では次回のブログもお楽しみに!
(インテリア以外のパリの美味しい朝食や世界遺産、美術館についての旅日記は追い追い、ホームページにアップしますので時々のぞいて見てくださいね。)
写真上:CreationBaumannにて。