12月12日、B&B Italiaにて、「空間と彫刻、それぞれの道」と題して、エイトデザインの藤井信介さんと、彫刻家の尾崎悟さんのトークショーが繰り広げられました。私は、5年ほど前、ツアーでミラノサローネに行きました。そのツアーの案内役が藤井さんでした。わぁ、懐かしい!と思って、サローに一緒に行った友人を誘い、参加させていただきました。
藤井さんが、その昔通った美大の予備校講師が尾崎さんだったそうです。もうかれこれ何十年前?今からから4年前に再会。その間のエピソードからお話くださいました。尾崎さんは、美大を目指す学生に、いつも精神論を語っていたそうです。それを真摯に受け止めていたのが藤井さんだったとか。その後すぐに講師を辞めて尾崎さんは芸術家の道に。「生徒にいうだけでなく、自分が本当の芸術家になろうと思った」というのが動機だったようです。
美大を卒業後、藤井さんはデザインの道を突き進んでいました。写真は店舗のスケッチ。CGではわからない。こうやって書いた方が完成がはるかに想像できる。できたものもスケッチと変わらない。と仕事の手法を披露してくれました。緻密な寸法まで、この段階で描きこんでいるのですね。
一方尾崎さんは、鉄やステンレスを来る日も来る日も叩く鍛金の毎日。運悪く、講師を辞めてすぐにバブル崩壊・・・。それから何十年も苦労を重ねたそうです。4年前、藤井さんと再会した時も、会いに行く電車賃もままならないほどだったとか・・・。
そして藤井さんの手がける空間に、作品を展示したところから、運命が動き出したようです。今は、名高いギャラリーが、その価値を見出し、海外のアート展などでも評価させているほど。縁が運命を動かすんですね。人生の中でいつ何がどう動くのか・・・本当にわからないものですね。
私は、セミナー後の懇親会で、「苦しい何十年の間、何が尾崎さんを支えていたのでしょうか?」と聞いてみました。尾崎さんは、ボソボソと、言葉を探してくださったけど、「うーん」と考え込まれました。一言で言い表せるようなものではないのでしょうね。
たくさん心に残るお話が伺えたのですが、一番面白かったのは、デザイナーとアーチストは何が決定的に違うのか?というところ。
お尾崎さん曰く、「デザイナーは客の要望を形にしないとフィーがもらえないフィービジネス。プレゼンを欲しいと思って買ってもらう。そしてお金をもらった以上は客に結果を出さなければいけない。自分はフィーが決まらない、一銭ももらわないところで作品を作る」そこが大きな違いだと。
そしてこうもおっしゃいました。「歴史的建造物は施主が作っている。ベルサイユ宮殿はルイ14世が建てたんであって、建築家(ルヴォー)が建てたんではない。つまり施主の力が建てさせた。」
・・・何が言いたいかと言うと、デザイナーに依頼した施主や取り巻きが色々な意見を言って、それを入れてしまうと、どんどん普通の建物になってしまう。施主がデザイナーを信じ切ってこそ尖ったものが生まれる。施主の覚悟があってこそ!と言う意味のようです。
そこには、藤井さんのこんなエピソードが。藤井さんがお肉屋さんに店舗のデザインを任され、内装を黒で提案したとき、オーナーに黒だけはやめてくれ!と言われたそうです。でも藤井さんは「お肉が一番美味しそうに見えるのは黒。やっぱり黒でいかせて欲しい。黒で仕上げて、ダメだったら塗り直します」・・・それをオーナーは認めてくれたそうです。そして、この作品が藤井さんの名と、お店の名を多くの方に知ってもらうきっかけになったそうです。
なんと、会場で美味しいお肉料理を作ってくださっていた写真上の方こそがそのオーナー。焼肉KINTANを何店舗も展開している鳴坂さん。
鳴坂さんは、どんな気持ちで、このトークショーを聞かれていたことでしょうね。(本当に美味しかったです。ショートパスタのミートソースが絶品でした!)
そして、「任せると言ってもらえたデザイナーは幸せ。その心意気に対してやってやる!と、デザイナーは奮い立つ。」
確かにそうですね。オーナーとデザイナーが、お互いを信じきる信頼そこが成功をうむのですね。
先ほど「うーん」と、考えこんでいた尾崎さんの答え・・・「自分で自分を信じきること」ではないですか?私、そう思いました。デザイナーと、施主という異なる価値観をもつ人どうしが信頼しあうのも難しいことですが、一人きり、自分で自分を信じるきることも険しいことだろうと思います。
その信じた何十年が、実を結んだんですね。これからのお二人のご活躍、ますます面白くなりそうです。(写真左より、IC川端さん四国から、尾崎さん、藤井さん、IC小池さん盛岡から、そして私)
心もお腹も満たされて、良い時間でした。最後にB&Bの新作(写真上)も見せていただき、帰路につきました。
私も振り返れば、お客様や上司、あるいは同僚に「任せるよ!」と、言ってもらえて嬉しかったことが多々ありました。その分プレッシャーも大きくなるけど、「期待には絶対応える」覚悟が決まりましたね。でも自分で自分が信じきれなくて、迷ってばかりいたっけ・・・そんなことを繰り返して成長してこれたんだなと、おそらく同じ年代を生きてきた尾崎さんの言葉で振り返ることができました。(もちろん、尾崎さんの20年に比べれば、甘っちょろいものですけどね、笑)
☆次回のサローネも、藤井さんのアテンドツアーがあるそうです。ミラノの後はロンドンだとか!
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